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PA46-350P マリブ・ミラージュ

08.06

先週、TBSのNEWS23、テレビ朝日、毎日新聞社から調布飛行場の墜落事故の件について電話取材を受けました。
僕が同型機の操縦経験が有るという事で色々な可能性を聞かれました。友人のフライトスクールから僕を聞いたようです。

まず、最後まで操縦を諦めなかったであろう川村機長と亡くなられた方、けがをされた方に哀悼の意を表します。

さて、色々な報道で言われていますが、私の経験では「重量オーバー」と「後方限界を超えて操縦不能になった」の2点です。

先ず、重量オーバーですが、国交省の記録では乾燥重量(Basic Empty Wegiht)は1200Kgとなっていますが、私の記憶では1400Kg近く有ったはずなのです。色々と昔の資料を見てもオプションを含まない状態で1245kgと言う結果で、オプションは120~140Kgになる事が中古販売店のサイトで確認できました。

そこで、テレビ朝日の記者に「事故機の耐空証明には乾燥重量が書いて有るから探して」と言ったところ、以前勤務していたパイロットがコピーを持っていました。その重量は3002lb(ポンド)です。これはKgにすると1363Kgになります。国交省に確認したところ、国交省の数字はStanderd Empty Weightであり、これにオプションを足すとBasic Empty Weightになるのです。最大離陸重量は1950Kgですから燃料が満タンとすれば122ガロン=356Kg 足し算すると1363+356=1594Kgで、1950-1594=356Kgで一人72kgとしても最大離陸重量限界になりますが、この計算でも当日の気温34度で有れば離陸滑走距離は960m必要ですから160m不足します。

でも、実際に滑走路上の温度は40℃は有ったと思いますから、40℃であれば最大離陸重量で1066m必要で266m不足します。

で、実際にはどうだったか?

乾燥重量1363+燃料356+男5人×77キロ385=2104Kgであり、最大離陸重量を154kg超過しています。重心位置のチャートによると1950Kgでの重心位置の許容範囲は3.7インチしかありません。このような状態で後ろに4人乗れば、重心位置が後方限界位置を超えて操縦不能になるのです。ビデオで離陸した瞬間に風も無いのにフラフラしてるのは、まさに操縦不能の状態です。

また、離陸後左に曲がっていますがこれもラダーがきかずに左へ曲がって行ったものと思われます。

警察の発表によると離陸後、墜落までの平均速度は130km/hだったそうです。これは約70ノットですが、事故機PA46-350Pの離陸速度は73ノット以上、上昇速度は110ノットです。同型機で外気温40℃、満タンで男性2名(1列目)と女性1名(2列目)で離陸した時は1200m位加速して100ノットで離陸しましたが、思うように上昇しませんでした。

そもそも、離陸するべきではなかったのです。

PA46-350PのPOH(パイロット・オペレーターズ・ハンドブック:マニュアル)はこちら
次に「エンジンの出力低下」が挙げられています。
出力低下の要因として、まず気温が考えられます。先週のテスト飛行では正常だったと発表されていますので、整備は良好と仮定します。

1:気温
当日の気温は35度と報道されていますが、滑走路の上では40度以上、下手すると50度を超えていたと思われます。
気温が40度を超えると空気密度が低くなって揚力が少なくなりますから、通常なら90ノットで離陸するところを110ノットで離陸する必要が有ります。

しかし、気温が高くエンジンの出力も低下している状態で、しかも5人乗って伊豆大島まで往復と考えれば、燃料は満タンだったと思うので気体の重量も重く、600mの滑走路では110ノットまで加速できなかったと思います。

しかも、風はほとんどなかったという事は、風に向かって離陸する航空機にとってマイナス要因です。
昔、八尾で滑走路上の気温が40度を超えていた時に3人しか乗っていませんでしたが、110ノット迄加速するのに1200m以上かかった経験が有ります。

2:マリブミラージュは主翼が細長いので、高空でも効率良く飛べるのですが、重心位置の許容範囲が狭く、後方限界を超えやすいと考えます。

後方限界は安定性を考慮して決められています。機首上げモーメントが大きくなりすぎず、失速角にまで機首上げ状態とならないように定められています。

後方限界を超えると失速からの回復が困難になる、フラットスピンに入りやすい、離陸の際に過大な機首上げとなり、失速する、地上走行時、方向維持が難しくなる、といった問題が出てきます。

重心の位置は一般的に言って、前方限界が空力平均翼弦MACの15~20%、後方限界が30~35%のところに設定されるのが普通です。
代表的なセスナC-172の場合、C-172の重心位置範囲をMACの位置に置き換えると23~36%の範囲となります。
今回は、燃料満タンで5人乗り、もし2列目と3列目に4人が座って、胴体後方に有る貨物室に結構な重さの荷物が有った場合、後方限界に近くなり失速からの回復は困難になります。

3:操作ミス
川村機長はプロですので考えにくいですが、正常なエンジンが出力低下を起こす可能性は2つ有ります。

①燃料のブースターポンプを入れ忘れた?
低翼機の場合、エンジンがタンクよりも高い位置に有るので、離着陸時は燃料ポンプをONにします。
確実に燃料を送る目的と、夏場は圧力をかける事によってパーコレーションやキャビテーションを防止することが出来ます。

墜落直前に「パンパン」と言う音が聞こえたという証言が有りますが、デトネーション(異常燃焼)で燃えきれなかった燃料がアフターファイヤー(排気管の中で燃える)を起こしていた可能性が考えられます。

②発電機はボス(両方)になっていたか?右か左の片方だけ使ってなかったか?
小型機は発電機が2個、点火プラグも2系統有りますが、離陸前に左右に切り替えて所定の回転数を確認してから「左右両方使う」に切り替えます。
これも考えにくい事ですが、恥ずかしながら私自信一回やったことが有ります。その時はパイパーPA28Rと言う4人乗りの小型機でしたが、上昇率が普通の半分しか出ませんでした。途中で気が付き、スイッチを切り替えたところ、瞬間アフターファイヤーが起きて「パンパン」と言う音が鳴りました。

マスコミ取材で答えた内容の抜粋ですが、エンジン出力低下に関しては、あくまで個人の想像で有ることをお断りいたします。

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